ミャンマー料理とその特徴とは?
ミャンマーは多民族国家で100を超える民族が共生する国、食文化的には中国やインド料理の影響を大きく受けているようです。そこにミャンマーの風土を元にした味や東南アジアの作物が加味されオリジナルな料理が発展している、といった感じでしょうか。
東京都内では高田馬場がミャンマー料理店の多いエリアで、Googleで検索したところ十数店が軒を連ねています。テレビ番組“孤独のグルメ”で取り上げられたお店や昔から営業している老舗も多く、高田馬場に行けば気軽にミャンマーの味を体験できます。未経験の方はぜひ一度行ってみてください。
ミャンマーのお祝い料理、ご馳走料理にトライ!
というわけで、今日はミャンマー料理店の宣伝をしたいわけではありません。日本在住17年の末成レレウィンさんにミャンマーのお祝い料理を教わりました。レレウィンさんが言うには、レストランで食べるミャンマー料理と家庭料理はだいぶ違うものなのだとか。たしかにミャンマーに限らず各国料理店のメニューというと、日本人の舌に合う味付けに重きを置いているものが多い実情があるかもしれません。人気のあるメニューに特化していった結果、日本人の好みに合わせその国らしさがやんわりと薄くなっていったなんて事もあるのかも?
外食と家庭料理どちらがエライのか
そもそも外食と家庭料理は営利と非営利という決定的な違いがあって、それはどうしたって食材や味付けや見た目に影響するものです。どっちが上とか下ではなくて、どちらにもお互い超えられないものがあるという気がします。外食では普段口にしないものが食べられるし非日常が体験できる。毎日研鑽を重ねているプロが作っているものだから美味しいし特別なのです。
ですが、シェフが毎日研鑽を積んでいるのは分かるけど、かえりみれば家庭料理だってまぁまぁ毎日つくっております。収益はあげられないし毎回感謝してもらえるわけでもないのにかかわらず。
私的に悔しく感じていたのは、シェフは30年やってれば大御所だけど、シュフは30年やってもおおやけに経験値としてカウントしてもらえない事でした。片や時間を味方にして経験値を積み上げ、社会の階段を上がる土台に出来るのに、シュフの経験値はまるで儚い砂時計の砂で、ひっくり返しては同じ日々を繰り返すだけ、そんな虚しさやり切れなさを感じることがないわけでもなかったです。←微妙な言い回し。
わたしはもう家族のご飯を一生懸命つくる時期は終了したともいえるので、今さらいいやとも思うのですけどね。女性や片方だけがご飯を作る時代でもないでしょうし。でもきっと今でも続く、シュフの役割を持つ者のもやもやの一つだと思います。
だいぶ話がずれましたが、そういうことを乗り越えて成り立っている家庭料理の美味しさって何とも言えないものです。商売の味では達せないものがありますよね。そういうことを考えると、日本以外の国の家庭料理やその延長線上にあるお祝い料理をレクチャーしてもらえるなんて、お金に変えられない贅沢!というのを今回ますます実感できました。
本題に行くまでが長いって!スミマセン・・。
レレウィンさんのつくるミャンマー家庭料理
さて、レレウィンさんが教えてくれる料理は食材選びから一つ一つの調理の工程までとてもこだわっていて、でもそのこだわりにはひとつひとつちゃんと理由があって無駄はないように思いました。これはミャンマーの家庭料理をしっかりと伝えたいというレレウィンさんのポリシーが日々の研究として積み重ねられ、できあがったやり方と見受けました。こんな風に言うと堅苦しいように感じるけど、そういう事ではなく、レレウィンさんの料理は芯がしっかりしているということなのです。実際のレレウィンさんはお話好きでチャーミングで堅苦しくありませんのであしからず!
本日のミャンマーお祝い料理のラインナップ
とても盛りだくさんなこんなセットリストでした。
・オンダミン(ココナツライス)
・チャッターヒン(チキン煮込みカレー)
・チンパゥ チンヤェ(ハイビスカス葉スープ)
・バラチョン チョウ(干しエビ,フライドオニオン,ガーリックで作るふりかけ)
・ミャンマーの旬の野菜サラダ
・仙草ゼリー
・カウン ニㇶィン サ ヌィ マ キン(餅米,ココナツケーキ)
ミャンマーのお祝い料理といっても、もちろん色々なものがあり、今回のメニューはたとえば人がたくさん集まる時とかお誕生日であるとか、そういうシーンでのもてなし料理の定番なのだそう。どれも多めに作って皆でシェアできる料理です。
ミャンマーのチキンカレー、チャッターヒンとココナッツミルクご飯
メインのチキンカレー、チャッターヒンは前夜に16人分、レレウィンさんがマリネしたものをソテーしてから煮込んでいきます。これは絶対に骨付きでとのこと。骨から出しが出ますからね!
カレーに添えるご飯オンダミンはココナッツミルクで炊いていきます。スリランカの会でもキリバットというお祝いのココナツミルクご飯がありましたが、アジアでは定番の食材ですよね。クリーミーでほんのりとした甘みがあって、植物由来でこのコクは貴重じゃないかと思います。カレーにはもちろん合うし、簡単デザートの素材としても優秀で大好きです。
管理栄養士目線でいうと、ココナッツの脂肪は中鎖脂肪酸が多く、カロリー的には他の油脂と同じくらいですが消化のルートが違い、脂肪として体に蓄積しづらいのです。ココナッツオイルをダイエット目的で使っている人も多いですね。
ハイビスカスの葉のスープ チンパウチンヤエ
そして今回参加した生徒さんのほとんどが初体験のハイビスカスの葉のスープ!私も初めてです。
ハイビスカスの葉を皆さん、食べたことはありますか?ただしこれは別名ローゼルと言って、私たちがよく目にする観賞用のハイビスカスとは種類が違うものです。
ミャンマーでは定番の食材だそうで旬の季節には生の葉が市場に出回り、レレウィンさんは大量に購入して火を通して冷凍し、一年中使うのだそうです。今はどうしているのか聞くと、日本でも知り合いにローゼルを育てている方がいて、分けてもらっているのだそう。
このローゼルは酸味があって、生の葉を一口噛んでみると結構酸っぱいのです。これをスープに入れると爽やかな酸味のあるスープとなります。
辛くないチキンカレー×ピリ辛のふりかけ
さてぐつぐつとチキンを煮込み、カレーが出来上がりつつあります。カレーの話に戻りますが、カレーというと沢山のスパイスを入れるのが普通と思いませんか?
でも今回のチキンカレーはほとんど辛くないのです。入れたスパイスは黄色のターメリック、赤いパプリカ、爽やかな風味のあるクミンの3つでこれらのスパイスに辛味はありません。そこでどうするのかというと、登場するのが辛味トッピング。
ミャンマー料理店に行くとトッピングするソースやふりかけ的なものがテーブルに置いてあることが多く、ミャンマーはトッピング文化があるのかなと思いますが、その点レレウィンさんにお聞きしたわけではないのではっきりしたことは言えません。が、このトッピング物がやたらに美味しい。
今回教えてもらったのはイカの発酵ペーストと干しエビ粉をミックスして使ったピリ辛ふりかけで、これにですね、唐辛子粉を入れてあれこれ炒めたり、フライドオニオンやフライドガーリックを混ぜて完成させます。聞いただけでそれ絶対うま味のかたまりで美味しいやつ!ですよね?
誰も置いていかないダイバーシティミャンマーのふりかけ
過去にも書いたかもしれませんが、実は私は辛いものが苦手です。味は好きだけど体に合わなくて、バーモントカレー甘口くらいのお子様向けでも一人で汗かいて引かないくらい。多分辛いものを体が危機として捉えちゃってると思うのです。そういう反応です。ヒリヒリとして痛い。だけどもそういう状況をわりと引け目に感じることもあり、せっかく人とカレーなど食べに行ったとしても、バーモントカレーですら汗なので大人の食べるカレーでは滝です。滝行です。そうするととにかく、早く食べ終えてしまいたい、汗をどうにかしようとか、心ここにあらずな感じになって落ち着かないのです。
だからこのトッピング式カレーは私にとって超素晴らしいもので、少し乗せて試してみたり、自分の好みで調節出来て、それでいて皆さんと同じものをシェアできてる感!誰も取りこぼさない多様性仕様。こういう方法があったのですね。優れものです。
ミャンマー家庭料理の五性五味
そんな私の事情などどうでも良いのですが・・料理はサラダを和えたりと完成に近づいてきました。ここでレレウィンさん直伝のミャンマーの家庭料理の大事なポイントを皆さんにお伝えします。
ミャンマーの家庭料理ではメニューに五味が揃うように作るのが大事なのです。
五味とは、酸味、甘味、辛味、鹹味、旨味のことだそうなので、今回作ったものを振り返ってみましょう。
ココナッツミルクライスやデザートの甘味、チキンカレーのチキンの骨の旨味、ピリ辛ふりかけの辛味、ハイビスカスの葉のスープの酸味、それと鹹味(塩味)ですね。
酸味はサラダに入れたライムも爽やかに効いていましたし、旨味ではふりかけの干しエビやイカの存在も大きいように思います。
こうやって五味を揃え、味や栄養のバランスを整えようという考え方で、薬膳料理の五性、五味とも通底しています。もっとも薬膳料理の五味は酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味で少し違うのですが、中国料理の影響が大きいミャンマーですから、五性五味の考え方が伝わってミャンマーの家庭料理に根付いたのかもしれません。
ミャンマーご馳走料理の完成!
さてそうこうしているうちにミャンマーのご馳走料理が完成しました。今回はレレウィンさんが全員分をレクチャーしながら作るというスタイルで、参加の皆さんには野菜の下ごしらえやカットをお手伝いして頂きました。ありがとうございました。
3人の食べ盛りのお子さんを持つレレウィンさんは、日々家族のために腕を奮いながら、ミャンマーの家庭料理、郷土料理を広めるべく自宅での料理教室やイベントなど積極的に活動し頑張っていらっしゃいます。素晴らしい!ミャンマーのご馳走料理をしっかりと教えていただきありがとうございました。今回もいろんな学びがありました。また一緒にお料理出来たら嬉しいです。
ご馳走様でした!
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次回は未定ですが、今年中にあと2回くらいできそうかな?