こんにちは。
今日は4月25日のイランお祝い料理会の報告です。
イランの甘酸っぱいベリー バーベリーを使ったお祝いご飯
今回の料理は日本ではほとんど食べられていないバーベリーというベリーを使った米料理です。サフランの黄色とバーベリーの赤がとても綺麗なお祝いご飯。イランでは、結婚式などのお祝いの時につくるご馳走だそうです。
バーベリーは日本ではほとんど食べられていませんが、ちょっぴり甘酸っぱくて癖がなくて美味しいです。イラン名ではゼレシュク、和名ではメギと言います。日本でもメギはあると思うのですが、食用の実がなる種類はないのでしょうか、日本産のメギの果実は見かけたことがありません。もし食べたことがある人がいたらぜひご一報ください。
イラン人は酸っぱいものを好きな人が多く(ナヒードさんは梅干しが大好きだそう!)バーベリーもよく食べられているそうで、その代表料理が今日つくるゼレシュクポロなのです。
サフランで黄色く色付けしたご飯にバーベリーを混ぜ込むと、まさにお祝い料理という華やかさ。そこにトマトソースで煮込んだ鶏肉を添えて食べます。それ絶対美味しいやつ!という予感が湧いてきます。
そして更にイランの米料理をつくる際の最重要ポイントというものが実はありまして、これは実際に教えてもらって初めて知った貴重な経験でした。イランの米料理においてとっても大事なポイントがあったのです。そのポイントとは何でしょうか??
それはおいおい明らかにしてまいりましょう!
日本とイラン文化の架け橋として活躍中のナヒードさん
さて、今日の先生をご紹介をします。
Nahid Nikzad吉成ナヒードさんです。
NHK Radio Japanペルシア語部門翻訳のアナウンサーもされていて、更には歌手としても活動しているという多才な方ですが、近づきがたいという事はなく、気さくで大らかで笑顔の絶えない楽しいナヒードさんです。
「イラン料理Persian Food in Tokyo」というFacebookページや「iran in japan」というアカウントでインスタでも情報発信してますので、ご興味ある方はぜひチェックしてみてください。
今回はナヒードさんのお友達でイラン人のフォロワーが数万人という方がインスタで配信するために飛び入り参加されました。賑やかにスタートです!
では作っていきましょう!
イランの米のおいしい炊き方 極意その1サフラン
イランの米料理の大事な食材というと、忘れてならないのはサフラン。サフランはイラン原産と言われており、スパイスとしての起源は青銅器時代までさかのぼると考えられているそう。世界で最も高価なスパイスの一つで日本には江戸時代に薬として入ってきました。
鎮痛、鎮静効果があって抗炎症作用も確認されている生薬ですが、大量に摂ると副作用もあるそうなので注意です。普通に料理に使う程度ならもちろん大丈夫。
日本でサフランを使う機会があまりなかったので、使い方をしっかり教えていただきました。
サフランを買うとめしべがそのまま入っている状態だと思いますが、これをそのまま使うのでなく、ぐりぐりと金属のスパイスミルで押しつぶし、水に浸けてサフラン水にして使います。
このサフラン水を炊いた米に混ぜて黄色く染めますが、全部をサフランご飯にするのではなく、飾り用として一部を染めて黄色と白のコンビネーションを楽しみます。
イランの米のおいしい炊き方 極意その2茹で方
ご飯はバスマティライスを使います。過去にインド料理の会でもバスマティライスを食べたので炊き方は理解しているつもりでしたが、その時とは異なりました。
今回良い意味で予想に反していたのがこの米の炊き方でした。バスマティライスは炊くのではなく茹でる、それは知っていたのですが、こんなに塩や油を使うと知りませんでした。
イランでは2種類の米の炊き方があり、今回はパスタ式ということで、実際パスタを茹でる時のように塩をたっぷりと使います。大鍋ですが塩大さじ4~5くらいは入れたでしょうか。するとゆで水はかなり塩味がつくので、しょっぱい米にならないのだろうか?と心配になりますが、ならないのです。
ナヒードさんが塩や油をガンガンと使うたびに私たちはびっくりしてしまうのですが、必要なものを思い切りよく使うというのは美味しい料理を作るうえでは大事な事。ビクつく私たちをしり目に(笑)テキパキと進めていくナヒードさんが素晴らしい。
この感覚をなんと表現して良いのか、日本人にとって米は主食だし普段は無味で炊いて食べるのが基本という意識が染み込んでいるので、たっぷりの塩湯でゆでるというのは地味に目から鱗な光景でした。
塩湯でゆでて、茹であがった米はこれで調理終了なのではなく、鍋に移してさらに続きます。
イランの米のおいしい炊き方 極意その3おこげ
実は前日の夜にナヒードさんから連絡があって、「おこげ」というワードが何回か出てきました。おこげを作りたいから小麦粉とじゃがいもを別途用意してほしいという事で、その時はあまりピンと来ず「それでおこげ作る・・?」くらいの感覚でした。
日本でも炊き込みご飯でおこげが出来ますよね。香ばしいおこげは多分皆好きだし争って食べるという状況も発生します。お店で食べていて「おこげが入っている、やった!」みたいな反応してしまうこともあります。なので「イランでもおこげが出来たら食べるんだね。」という気持ちだったのですが、そういうことでなく、イランではもっともっと積極的な姿勢でおこげをつくっていく!そんな感じです。
たまたま出来たからではなく、上手におこげをつくるのがかなり大事なポイントのようです。
もしかしたら、イランだけでなく中東の米料理でおこげをつくるのは割とポピュラーな事?なのかもしれませんが、それは今後調べの宿題としたいと思います。
イランのおこげは何でつくる?
それでその大事なおこげですが、上述のように水溶き小麦粉とじゃがいもで2種類のおこげをつくりました。
水溶き小麦粉で作るおこげは、羽根つき餃子をつくる要領といえば分かりやすいかと思います。鍋底に水溶き小麦粉を敷いて、その上に茹でたバスマティライスを乗せ、じっくりと弱火で焼いていきます。ほんとにじっくりで45分ほどかけます。
じゃがいもの方はスライスしたジャガイモを鍋底に敷くのです。
出来上がったこの美味しそうなおこげを見てください!
このおこげをつくる工程で、かなりの量の油を米に注ぎます。水と油を半々で割ってコップ1杯くらい。こんなに油入れてべたべたしないのかと思うのですが、なりません。おこげが美味しくカリっとなりました。
どちらのおこげも本当に美味しいです。テフロン加工の鍋を使うとくっつかず上手に焦げができます。これはナヒードさんのおすすめ。
塩湯でゆでたバスマティライスを水切りしてこげの元を敷いた鍋に移し、水と油の混合液を注いで弱火で蓋をしてゆっくりと焼いていきます。
レシピに頼らないイランの家庭料理
ただこの辺りの塩や油の調整はナヒードさんの身についた感覚で、いちいち大さじ〇という風に考えず、その時々に臨機応変でつくっていくと仰っていました。それはそうですよね。今はネットでいくらでもレシピ検索できるので、書かれているのに従って再現するという感覚が普通になってきました。そうなると量が明記してあることは当然の前提としてあります。
なんでも作れて本当に便利ですが、身につくかという事になると覚束ない。ナビに頼りすぎて地図が頭に入らないのと似ているというか。
迷わなくて済むのは良いし、ネットのレシピで料理するのも便利だけど、料理を文化としてとらえた時に、文化というのは気が遠くなるような繰り返しの末に一定の型ができて後世に残っているものだから、今のようになんでも便利な時代に生みだされるものは果たして食文化という形で定着して残っていけるのだろうか、という気はします。
しかもしかも、私が言うのは何なのですが、
日本人はいろんな料理を作りすぎだし食べすぎなのですよね。←ほんとーにお前が言うな、笑
世界を見渡しても、きっと日常的には決まりきったものを食べていることの方が多いでしょう。レシピとか量とか言う前に、毎日のように繰り返すことで自分の味は決まっていくし自分だけのコツも生み出される。
私は家族のための料理づくりからはほぼ卒業している身だし、いろんな料理を作るのは食文化を知りたいからというのが大きいのだけれども、こんなにもいろんな料理に溢れ、いろんな料理を作る、食べるのが珍しくない国で家族の食事を一手に担うのは大変なことだよね(そっちに飛ぶ?)と考えてしまいます。
同じものばかり作っていたらそれはそれで退屈だけど、作りすぎて身についてるから美味しく出来るし楽っていう感覚を持っておくのも良いよな、とナヒードさんの話を聞いて思ったり。
何を言いたいんでしょうか、私。
ちょっと脱線しすぎたので本題に戻りましょう。
そんなこんなでお祝いのバーベリーご飯とチキン、ヨーグルトサラダ、ホルマゲルデューイの4品を作り上げました。
イランのお祝い料理出来上がり!
カリっとしたおこげと甘酸っぱいバーベリー×チキンのハーモニー。チキンは焼き目をつけてからトマトソースで煮たもの、バーベリーご飯によく合います。
ヨーグルトに刻んだキュウリとハーブを入れるサラダは他の中東諸国や北ヨーロッパでも食べられています。イランのは体を冷やしすぎないようにクルミやレーズンを入れると仰っていて、薬膳的な考えがあって興味深いです。バラの花びらを散らして涼しげなご馳走になりました。
デーツの種を除き半割にしたクルミを入れてココナッツファインをかける、簡単だけどおいしいデザートです。イラン産のデーツ、とっても美味しかった!
皆さん楽しく料理されました。お疲れ様でした。
写真ギャラリー
イランのお祝い料理を楽しんで頂けたでしょうか。
ナヒードさん、ありがとうございました。参加者の皆さまも楽しい時間を一緒につくっていただきありがとうございました。
またお会いできれば嬉しいです!
次回は5月13日(月)モロッコのお祝い料理です。